高岡コロッケ〜夢は揚げたて!富山新聞

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【2009/4/17付】富山新聞掲載

◎利長くんの高岡400年(83) 第2部・2014年対策 コロッケ(中) 駅地下にシンボル残す

 JR高岡駅前の地下に続く階段を降りると、右手に一軒の店がある。高岡コロッケを扱う「えきちかコロッケえいぶる」だ。「駅のすぐそばで食べられるのは、観光客にはありがたいね」。利長くんは揚げたての味を想像した。

●厨房部門は移転
 「えいぶる」は昨年七月、高岡コロッケの販売と知的障害者の就労を兼ねて開店し、健常者と障害者がともに働く。そんな予備知識をもとに利長くんは店を訪れたが、店員はわずかしかいない。首をひねる利長くんに、店を運営するNPO法人「えいぶる」の神島健二理事長が教えてくれた。「厨房(ちゅうぼう)部門は市内の別の場所に移したんです」。
 事情を飲み込めない利長くんに、神島理事長が説明してくれた。開店以来、就労訓練を行う障害者を順次受け入れた結果、厨房部分が手狭になった。さらに、高岡駅周辺整備事業の影響で駅地下の人の流れが変わり、客が減少することを懸念。旧知の給食業者の好意で、空いた調理場を「えいぶる」の厨房部門として使わせてもらうことにしたのである。
 「どうして店ごと引っ越さなかったんですか」と尋ねる利長くんに、神島理事長が明快に答える。「高岡コロッケを発信する拠点として、店は高岡駅近くに残しておくべきだと考えたんです」。

●気軽に立ち寄り
 神島理事長は、こんなエピソードを紹介してくれた。三月上旬、小銭を握りしめた金沢市内の保育園児約三十人が販売体験のため「えいぶる」を訪れた。高岡コロッケの店として、場所が分かりやすく、気軽に立ち寄ることができることから選んだという。高岡市若手職員の有志でつくる「カラーたかおか」によると、現在でも高岡コロッケを買える店の問い合わせに対し、「えいぶる」を薦めるケースが多い。
 「コロッケを駅地下で売るなんて、いい発想ですね」と感心する利長くんに、神島理事長が打ち明けた。「就労支援が目的だったので、最初からコロッケを売るつもりではなかったんですよ」。開店前はパンや菓子の販売も検討したが、理事の一人の勧めもあり、「駅のそばで観光客にコロッケを売る」というコンセプトを特徴にしたのである。
 「正直、経営は楽ではありませんが、高岡コロッケの看板が結構、役に立っています」と神島理事長。「えいぶる」では今後、駅地下での販売に加え、企業向けの給食やホテルなどの受注にも力を入れるという。
 「高岡駅が新しくなれば、駅地下で高岡コロッケを売る店として存在価値が高まりそうだ」。利長くんも期待を寄せた。

六種類のコロッケを袋詰めする従業員=高岡市の「えきちかコロッケ えいぶる」