高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(77)

第7部・おいしい出会い(7)
朝市 若い力で商店街に活気

 午前五時半、高岡大仏前のアーケード街が買い物客であふれる。高岡市坂下町通りで第二、第四日曜に開かれる「たかおか朝市」である。ひと際、威勢のいい声を響かせているのは、高岡市などの若者でつくるグループ「らくだらんま」のコロッケ屋台だ。四月の開幕から欠かさず出店しており、毎回、約二時間で二百個をさばく人気となっている。

たかおか朝市でコロッケを販売する「らくだらんま」のメンバー=高岡市の坂下町通り

●楽しんでまちづくり
 らくだらんまは会社員や市職員、大学生、高校生など、さまざまなメンバーで構成される。グループ名は「ばかな若者」を意味する富山弁の「だらんま」から取った。まちづくりを難しく考えず、ばかみたいになって楽しめばいい、との思いが込められている。
 今年一月に三人で発足した後、口コミで仲間の輪が広がり、現在は十五人に増えた。「コロッケのまち高岡」の発信に一役買うため、たかおか朝市など中心商店街のイベントに出店しているほか、七月には高岡鋳物発祥の地・金屋町で小学生の体験合宿を企画するなど、独自の活動を続けている。
 「朝早く声を張り上げるのはストレス解消にもなってますよ」。こう話すのは代表の山下純さん(24)である。山下さんは滋賀県出身だが、大学の卒論で路面電車「万葉線」によるまちづくりを取り上げたことがきっかけで高岡にほれこみ、市内の物流会社に就職した。まちづくりのグループをつくったのも高岡を愛する気持ちゆえだ。

●客の反響励みに
 らくだらんまでは、昔ながらの牛肉コロッケの販売にこだわり、片原町の精肉店「神戸屋大福院店」から仕入れている。同店は戦後、コロッケがまだ「特別なごちそう」とされたころから作り続けている老舗だ。かつては買い物客でにぎわった周辺の商店街は、郊外大型店との競合などで人通りが少なくなっており、二代目店主の前田敬一さん(65)は商店街の活性化に取り組む若者たちに心強さを感じている。
 高岡コロッケの浸透もあって、らくだらんまの屋台には常連客が増えてきた。売り上げは運営費でほとんど消えてしまうものの、出店のたびに声をかけてくれる客の反響がメンバーの励みになっている。高岡のまちおこしに情熱を燃やす「だらんま」が次々と生まれることが、高岡コロッケの盛り上げには欠かせない。

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