高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(75)

第7部・おいしい出会い(5)
一宮(下) 文化に根付いた名物活用

 「高岡コロッケと発想が同じだ」。七月下旬、愛知県一宮市を訪れた高岡商工会議所の一行は、一宮市で話題になっているまちおこし運動に驚いた。題して「一宮モーニング」。喫茶店のモーニングサービスを活用して一宮を全国発信する取り組みである。

一宮商工会議所の関係者と懇談する高岡商工会議所のメンバー=7月27日、愛知県一宮市

●一宮モーニング
 一宮市のモーニングサービスに対するこだわりは徹底している。コーヒーにトーストやゆで卵、サラダなどがついて値段は四百円前後。店によっては具だくさんのサンドイッチや小倉あんを載せたトーストを出し、茶わん蒸しやうどん、みそ汁、手作りゼリーなどが付いてくる。豊富なメニューに、訪れた人が面くらうことがあるという。
 織物のまちとして知られる一宮市では昭和三十年代、経営者らが織機の音を避けて喫茶店に商談の場所を求めたとされ、織物業の繁栄とともに喫茶店が増えていった。
 その後、朝の時間帯に飲み物だけでなくトーストやゆで卵、ピーナツを付けるサービスが始まり、「一宮モーニング」と呼ばれるようになった。週末の朝には家族で「モーニング」を楽しむ習慣が生まれ、品ぞろえと価格を競い合う「モーニング戦争」が起きたこともあり、全国チェーンのコーヒーショップも撤退を余儀なくされたという。
 こうした地域の文化をまちの活性化につなげようと、一宮商工会議所青年部の有志が今年五月、「一宮モーニング探検隊」を結成、市内の喫茶店を回ってメニューや値段などを調査した。その成果を七月下旬、「一宮モーニング博覧会」として発表したのである。

喫茶店のモーニングサービスを紹介するパネル展示に見入る来場者=7月28日、愛知県一宮市

●客をもてなす心
 商工会議所青年部の森隆彦会長は「お客さんをもてなす心がモーニングという文化を生み、根付かせた。モーニングを知ることで一宮の産業の歴史を知ることができた」と博覧会の意義を強調する。博覧会では豊富な品ぞろえのモーニングを提供する喫茶店が並び、探検隊が調べた五十一店を紹介するパネルや地図が展示された。三日間で一万人が詰めかける盛況ぶりだった。
 博覧会を訪れた高岡商工会議所の山本務観光文化国際常任委員長は「仕掛け次第で、まちが盛り上がることを示している」と、高岡コロッケの活動とだぶらせた。来年春に東海北陸自動車道が全線開通すれば、高岡と一宮の時間距離は一段と近くなる。地域の文化に根付いた名物の競演は交流の発展につながるはずだ。

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