高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(72)

第7部・おいしい出会い(2)
龍ケ崎(中) 女性パワーで名物に

 六月中旬、茨城県龍ケ崎市を訪れた橘慶一郎高岡市長は、コロッケでもてなしを受けた。振る舞ったのは龍ケ崎市商工会女性部で、コロッケを新しい名物に育て上げた立役者である。橘市長は五、六個をおいしいそうにほおばり、メンバーを喜ばせた。
 「まちおこしになるなら、コロッケでなくてもよかったんです」。呼び掛け人である女性部長の吉田京子さんは、販売を始めた七年前を振り返る。吉田さんは商工会活動でさまざまなイベントに取り組んできたが、一過性で終わってしまうことに物足りなさを感じていた。継続的に人を呼び込むことができないかと思案していたところに、東京などで若者がコロッケを食べながら街を歩いている姿を見てひらめいた。

龍ケ崎市を訪れ、商工会女性部と記念写真に収まる橘市長=6月15日、龍ケ崎市内

●思い出の食べ物
 学生時代、部活動でバレーボールに熱中した吉田さんにとって、コロッケは学校帰りによく食べた思い出の食べ物だ。「コロッケなら子供が好きだし、人を集められるかもしれない」と考え、女性部の仲間と二〇〇〇年十月に商店街の一角の小さな駐車場で四百個から販売を始めた。
 当初は完売にはほど遠い状態だった。しかし、地元メディアに取り上げられたことで話題を集め、徐々に売れ行きが伸びていく。イベントへの出店依頼が相次ぎ、飲食店にも卸すようになった。今では一カ月に一万個近くを売りさばくまでになったのである。
 吉田さんらの最大の武器は、フットワークの軽さである。依頼があれば、県外でも迷うことなく出掛けていく。当初、市内では活動を冷ややかに見る向きもあったが、市内の飲食店が集まって「コロッケクラブ龍ケ崎」が発足し、学校給食にも登場して見る目が違ってきた。市ではイベント出店に職員を派遣したり、搬送車を出すなど支援している。

茨城県内の高速道路のサービスエリアでコロッケを販売する女性部のメンバー

●観光親善大使
 女性部が自発的に活動してきたことが、龍ケ崎コロッケを全市に広めることにつながった。吉田さんは「私たちは観光親善大使。龍ケ崎をもっとPRしたい」と話し、来年一月に予定する日本海高岡なべ祭り出店を心待ちにする。
 龍ケ崎コロッケが成功した要因について、吉田さんは「失敗しても、やり直せばいいとの思い切りのよさがあった」と振り返る。龍ケ崎の女性パワーは高岡コロッケにも見習うところがありそうだ。

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