高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(50)

第4部・地域まるごと(10)
居酒屋 富山市でも定番メニュー

 「高岡コロッケ」は富山市内の居酒屋でも人気を呼んでいる。JR富山駅近くの内幸町にある「ばさら」では、今年二月から「ホクホク高岡コロッケ」としてメニューに加えたところ、発売から注文が相次ぐようになった。約八十品ある料理のうちで、毎月の売り上げで必ず上位三位に入るほどだ。
 「コロッケに地域ブランドという付加価値が付いたおかげでしょう」。総料理長の岩井利之さん(47)は人気の理由をこう分析する。岩井さんが高岡コロッケをメニューに加えようと思い立ったのは、北陸自動車道の小矢部川サービスエリアに立ち寄った際、コロッケの看板や、のぼり旗を目にしたのがきっかけである。庶民の味として全国的に親しまれているコロッケが地域ブランド化していることに驚かされた。

富山市内の居酒屋で人気メニューとなっている「高岡コロッケ」=同市内幸町の「ばさら」

●全国一を実感
 岩井さんはスーパーの総菜売り場でコロッケが山盛りに置かれているのを見るたびに、富山のコロッケ消費量が全国一であることを実感している。どこか懐かしさがあるコロッケは県内外の客に喜んでもらえるはずと、店長の浜松英生さん(27)に提案し、賛同を得た。
 浜松さんは「高岡コロッケは地元が仕掛け、地元が動いてブランド化を進めている。ぜひとも応援したいという思いもありました」と説明する。
 「ばさら」には、明太子を入れた「明太コロッケ」、桜の塩漬けを加えたホワイトソースを道明寺の衣で包んだ「ライスクリームコロッケさくら仕立て」など、既存のコロッケ料理があった。そのため、岩井さんは当初、「高岡コロッケ」にも何か一工夫することを検討した。しかし、思案した末にジャガイモと新玉ネギに牛肉が入ったシンプルなコロッケにした。素朴さを大切にしたいと考えたためだ。

コロッケを揚げる岩井さん

●男性から支持
 「高岡コロッケ」は売り切れになる日も多く、特に男性のサラリーマンから高い支持を得ている。岩井さんは「牛肉コロッケで売り出しても人気メニューにはならなかったはず。地域ブランドはメニューにとって何よりの力になっています」と話す。
 駅に近い場所柄、店には県外からの客もよく訪れ、富山の食文化として「高岡コロッケ」を紹介する役割も果たしている。高岡周辺ではなく、富山市の居酒屋でも人気メニューとなったことは、全国発信に向けて一つの弾みになるといえる。

 第4部おわり。第5部は5月下旬から掲載します。

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