高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(47)

第4部・地域まるごと(7)
菜種油 「純戸出産」にこだわり

 先月二十九日、高岡市戸出地区で開かれた「といで菜の花フェスティバル」(富山新聞社後援)で、地元産の菜種油で揚げたコロッケが人気を集めた。地元農家でつくる農産物加工グループ「なの花の里」が出店し、昨年より百個多い五百個を販売した。戸出産の菜種油は「高岡コロッケ」を引き立てる存在にもなっている。

菜の花入りのコロッケを販売する「なの花の里」のメンバー=先月29日、高岡市の高岡オフィスパーク

●昔ながらの製法
 戸出地区で栽培される菜の花から抽出される菜種油は「純国産なたね油」の名称で、昨年は四千六百六十三リットルが出荷された。一リットル千五百円という価格は、国内消費の九割以上を占める輸入品の約三倍だが、品質にこだわる消費者から受けている。
 戸出産の菜種油は、菜種を炒(い)ると出てくる油を機械で搾り出し、濾(ろ)紙でこした後、五日間ほど寝かして不純物を沈殿させて作られる。大手の製油業者では油と結合しやすい化学薬品を触媒とし、少しでも多くの油を搾り取るケースが多いが、戸出産は昔ながらの製法にこだわっている。菜種油を取り扱う高岡市農協の竹田宗弘営農課係長(38)は「いわゆる一番搾りの油のみを使っている。価格を抑えるよりも、品質を優先している」と胸を張る。

高岡市農協が販売する菜種油。容器は透明なガラスを使っている

●信頼とブランド力
 こだわりは容器にも表れている。食用油は直射日光に当てると劣化するため、不透明なプラスチック容器が使われていることが多い。しかし、戸出の菜種油はあえて透明なガラス容器を採用している。油にわずかでもプラスチックが溶け出すのを防ぐためで、安全性に対する消費者の意識に配慮した。
 地元の主婦も菜種油に大きな信頼を寄せている。「なの花の里」が農協の直売所で販売する七十種類の総菜のうち、コロッケや天ぷらなどの揚げ物は菜種油が必ず使われている。
 「なの花の里」では、ジャガイモと菜の花入りのコロッケを販売しているが、肉と卵を除いて、すべて戸出地区で作られる材料を使用している。香りが良く、ビタミンを豊富に含んだ菜種油が地元の野菜などに合うとして好評という。会長の高畑巌さん(63)は「地元で採れる材料で作るのが料理の基本。その意味で戸出の菜種油を使うのは当然です」と強調する。
 戸出産の菜種油は五年前から大手百貨店や全国のスーパーに並ぶようになった。純国産の菜種油を特産品として商品化したことが認められたのである。竹田係長は「ブランド力を大切に戸出の魅力をさらに発信したい」と意欲的だ。ふるさとの恵みに対するこだわりは「高岡コロッケ」を発信するために欠かせない。

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