高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(44)

第4部・地域まるごと(4)
名水ポーク 川の恵み生かし全国へ

 黒部市特産の豚肉「名水ポーク」を使った「名水コロッケ」が、来月から全国の精肉店の店頭に登場する。製造するのは同市の食肉専門卸会社「K・MEAT(ケー・ミート)」で、柔らかな肉質と口に広がる芳醇なうまみに着目し、開発を進めてきた。「富山の自然がはぐくんだ名物として発信したい」。こう話す河田周平社長(32)の思いは「高岡コロッケ」が描く将来像と通じるものがある。
 名水ポークは、名水百選である黒部川扇状地の湧き水を使って育てられた豚であることから名付けられた。
 黒部市内には「名水ポーク」を使ったコロッケを販売している精肉店があるが、K・MEATでは名水ポークを使った「名水コロッケ」、氷見市特産の氷見牛を入れた「氷見牛コロッケ」、両方の肉を合い挽(び)きにした「氷見名水コロッケ」の三種類を売り出す計画だ。いずれも二割程度を粗挽きの肉にして肉の食感を残すようにしている。
 河田社長は黒部市生まれだが、二十六歳まで名古屋市で暮らしており、みそカツ、天むすなど名古屋の食文化に浸ってきた。しかし、二年前に食品卸会社を設立した際、富山ブランドの食材で勝負する道を選んだ。「富山は水と空気に恵まれ、全国に通用する素材が多い。生かしていくのは当たり前です」と話す。

「名水コロッケ」を試作する飯田部長=上市町西中町

●独自の販売網
 K・MEATでは富山市など県東部を中心とした飲食店約百店舗をはじめ、東京や静岡、岐阜など県外の店と取り引きがあり、独自の販売網を使って広めていく考えだ。発売まで試行錯誤に余念がない飯田眞規業務部長(28)は「県外でも受け入れられる出来にしたい」と意気込む。
 名水ポークは黒部市養豚組合とJA富山経済連の共同研究から生まれた。南進組合長(52)や木島敏昭さん(57)ら生産農家が一九九九(平成十一)年から販売を手掛けている。黒部川の伏流水と竹酢液を配合した餌が柔らかな肉質を生み出し、肉の臭みと調理時に出る肉汁を抑えている。生産者は四軒しかないが、年間約二千頭を全国に出荷するまでになった。

肉質の良さが自慢の「名水ポーク」=黒部市荒俣の農場

●豚も旬の味
 各農家では肌や目の輝き、食欲など一頭ずつ細かな変化がないか目を配る。木島さんは「全国に誇る黒部の名水で育った豚はこの地でしか作れない。鮮度にもこだわっており、旬の味が感じ取れるはずです」と胸を張る。
 名水コロッケには生産者の味に対する誇りがしっかりと込められている。富山発のコロッケとして全国に広まっていけば、高岡コロッケと相乗効果を上げる期待が膨らんでくる。

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