高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(42)

第4部・地域まるごと(2)
シロエビ 技術と発想でブランド化

 今月十一日、高岡市のホテルニューオータニ高岡で開かれたパーティーで「宝石コロッケ」を並べた屋台が登場し、来場者の人気を集めた。宝石コロッケの名称は、具材の一つであるシロエビが「富山湾の宝石」と呼ばれていることにちなんでいる。二年前、ホテルで特徴のあるコロッケをメニューに加えようということになり、富山を代表する食材であるシロエビの活用が自然と浮かんだという。

水揚げされるシロエビ=射水市の新湊漁港

●「石」から「宝石」へ
 シロエビは富山ブランドとして全国に出荷され、ホタルイカやブリと並んで食通をうならせる。もっとも、かつては保存の難しさや殻をむくのに手間がかかることもあって、空揚げやそうめんのだしに使われることが多かった。価格もそれほど高くなく、食紅で染めてサクラエビの代用品として出されていたこともあったほどで、「宝石」にはほど遠い「石ころ」のような扱いをされていたのである。
 県内有数の水揚げ量を誇る新湊漁協で約五十年間シロエビ漁に携わる渋谷勉さん(65)=射水市放生津=によると、昔は漁師にとって喜びの大きい魚種ではなかったという。その状況が約二十年前に大きく変わった。冷凍したシロエビから殻をむいた「むき身」が大量に作られるようになり、全国に出荷できるようになったのである。当時のグルメブームに乗って価格も上昇し、今では富山湾でとれる魚介類の中でも高価な部類に入るようになった。
 渋谷さんは「冷凍技術の発達もあったが、特産物を生み出さなければ漁業の先行きにかかわるとの危機感も働いた」と振り返る。
 技術の進歩により、シロエビを加工した商品が次々と現われた。米菓に始まり、かまぼこやラーメンのスープ、コロッケ、押しずし、かき揚げ丼など数えあげればきりがない。コンビニ会社も着目し、シロエビの天ぷらを挟んだおにぎりやうどんを開発した。粉末に加工したアイスクリームまで登場し、ブランド力を背景に商品の可能性は広がる一方である。

パーティーで人気を集めた宝石コロッケ=高岡市内のホテル

●相乗効果
 新湊漁協の努力も見逃せない。二〇〇三年、大手ビール会社との提携によるキャンペーンを展開し、知名度を向上させた。相乗効果で、新湊でとれる他の魚の価格を上げることにもつながっている。
 新湊漁協の矢野恒信組合長(61)は「苦労はあったが、新湊の魚が全国で通用するという自信を持てたのが大きい」と話す。新しい技術にアイデアを加えてブランド化に成功したシロエビの軌跡は、高岡コロッケにとっても大いに学ぶところがありそうだ。

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