高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(41)

第4部・地域まるごと(1)
サトイモ 藩政期からの味に磨き

 砺波平野に暮らす人々にとって、サトイモは生活に溶け込んだ食べ物である。口当たりがしっとりとしていて、粘り気があり、食材として人気が高い。産地である南砺市では、全国ブランドを目指して販路拡大を進めている。その取り組みは、高岡市がコロッケをまちに根付いた食べ物として全国発信しようとしている姿と重なる。

南砺市で取れたサトイモを品定めする市民=昨年11月26日、同市岩屋

●加賀藩が奨励
 サトイモ産地として知られるのが、旧井波町山野と旧福野町焼野である。中でも、山野地域のサトイモの歴史は藩政期にさかのぼる。文献によると、一六六〇(万治三)年に加賀藩から琉球里芋が農民に下賜され、飢饉(ききん)に備えて裁培が奨励されたのが始まりと伝わる。
 生産者でつくる「山野さといも組合」は、露地栽培にこだわり、時間をかけて育てることで、土の恵みをたっぷり受けたサトイモを生産する。JAとなみ野と共同開発した贈答用の「ふる里いも」は、石川県や北海道から注文が寄せられる人気商品となっている。JAとなみ野は、新たに大阪などへの出荷を計画するほか、サトイモを使った焼酎を開発する構想を持つなど、産地の活性化に余念がない。
 祖父から三代にわたってサトイモ裁培にかかわってきた細川正雄組合長(64)は「加賀藩が奨励したという歴史が誇り。ほかの産地とは違う物語を訴えていけば、もっと消費を拡大することができるはず」と意欲的だ。
 「南砺といえばサトイモ」という意識が強いからであろうか、各家庭では知恵を絞って料理の幅を広げてきた。味噌(みそ)田楽、サトイモ汁、ぜんざい、いとこ煮など多彩なメニューがあり、料亭でもサトイモを使った創作料理が当たり前のように並ぶ。
 JAとなみ野井波中央支店営農購買課長の簗田敏裕さん(49)は「家の畑でサトイモが裁培され、食卓には味噌田楽がよく並んでいた」と子どものころを振り返る。南砺市の精肉店がジャガイモの代わりにサトイモを使ったコロッケを誕生させたのは、そんな素地があったからと言える。
 南砺市のサトイモは、グルメ漫画「美味(おい)しんぼ」でも紹介された。主人公が富山県内を味巡りする中で、氷見のブリや新湊のシロエビ、砺波の大門素麺などとともに取り上げられた。細川組合長は「漫画を通して県内各地の名物や特産品が互いに協力してPRすることの大切さを感じた」と話す。

地元のサトイモに思いを巡らせる細川組合長=南砺市岩屋

●一石二鳥の産物
 サトイモコロッケは高岡、南砺両市の名物をPRできる一石二鳥の産物である。互いの食文化に厚みを加えるためにも、地域連携は欠かせない。

 第4部「地域まるごと」では、高岡市内外の食材を取り上げながら地域の活性化策を探る。

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