高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(39)

第3部・あつあつ談義(9)
富山県旅行業協会長、伏江努氏
ありふれた素材に磨き

 大分県で新しい観光地として注目されている豊後高田市を訪れて、目からうろこが落ちる思いをしました。昭和三、四十年代の懐かしい商店街の姿を再現したことが評判を呼び、年間約三十万人が訪れるようになっています。古くて不便なだけと思われていた商店の建物が、歴史と伝統ある建築をとどめていることに市民が気付き、にぎわいづくりに活用したのです。地元の人にはありふれたものであっても、県外の人には新鮮に映ることが観光のヒントになるいい例です。
 高岡市では瑞龍寺をはじめ、前田利長墓所、高岡古城公園、高岡大仏、土蔵造りの町並みなど名所旧跡をたくさん抱えています。しかも、ほとんどがJR高岡駅を起点にして半日程度あれば、回れる範囲にあるのです。しかし、高岡の人はこうした財産をやや過小評価している気がします。大事なのは豊後高田のように既存の素材に磨きをかけ、売り出すアイデアを持てるかにあると思います。

富山県旅行業協会長、伏江努氏

ふしえ・つとむ 富山県福祉旅行センター社長。2005年から県旅行業協会長。「まちの駅」として全国初の民間経営となる「まちの駅たかおか」を00年に開設した。55歳。

●懐かしいにおい
 その点では生活に溶け込んでいるコロッケをまちおこしに活用するのはいい発想です。私自身、中学生のころ、ご飯やおやつ代わりに食べた思い出があります。子供の小遣いで買える手軽さがあり、豊後高田の「昭和の町」のような懐かしいにおいが魅力です。
 瑞龍寺の近くに二〇〇〇(平成十二)年、「まちの駅たかおか」を開設しました。国宝であっても寺だけの努力では多くの観光客を呼び込むことはできません。高岡の情報を紹介し、訪れる人をもてなす場所が必要と考えたのです。高岡コロッケのキャンペーンも加盟店の頑張りだけでは大きく発展させることはできません。「高岡コロッケ」を食べてほしい、全国の人に知ってほしいという市民の盛り上がりが成功の鍵を握るのです。

●前田記念館を
 高岡観光を活性化させるには、開町からの歴史を紹介する「前田記念館」を作るのも一案でしょう。その上で町衆の歴史や文化を感じながら散策するルートができれば、観光客がもっとまちを歩くようになります。学芸員が解説する場面があるともっと楽しくなるでしょう。高岡に人を呼び込むために市民が知恵とアイデアを出し合う時です。高岡コロッケは格好の題材になるはずです。

第3部・掲載リストに戻る

エピソードトップへ