高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(23)

第2部・夢は揚げたて
地産地消(下) ふるさとの恵みにこだわり

 高岡市戸出西部金屋の農家の有志でつくる農産物加工グループ「なの花の里」は、七十種類の総菜を農協の直売所などで販売している。化学調味料など添加物を一切使わない「じゃがいもコロッケ」は看板商品の一つである。
 具材は肉と卵を除き、すべて地元のものを使っているが、中でもメンバーが気に入っている材料が、戸出地区のシンボルとも言うべき菜の花だ。
 グループは二〇〇五年六月、旧戸出町農協金屋事業所が加工施設に改修されたのに合わせて、総菜の一つとしてコロッケを作り始めた。  具材はジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ひき肉、グリーンピースなど。しかし、揚げた際にグリーンピースの皮が破れることが多く、品質が安定しなかった。

JA高岡といで農産物直売所の店頭に並ぶ「じゃがいもコロッケ」

●菜の花畑つくる
 「名前だけでなく、総菜にも菜の花を使ってはどうか」。客からのアドバイスもあり、グループでは昨年、約百平方メートルの畑で、菜の花の栽培を始めた。菜の花と言えば春のイメージだが、実は早生の種類もあり、このときは九月に植えて十一月に摘み取った。
 早速、グリーンピースの代わりに、葉や茎、つぼみの部分を細かく切ってコロッケの具材にしてみた。グリーンピースより鮮やかな彩りで、あっさりとした味がジャガイモとよく合った。「これはいける」。メンバーらの実感だった。
 会長の高畑巌さん(63)は「材料が簡単に手に入ったので、作りやすかった。身近な材料で作るのが調理の基本ではないか」と振り返る。揚げ油は、菜の花から抽出した戸出名産のなたね油と大豆油を半々の割合で混ぜて作る。野菜はメンバーの家で採れたものを使っている。

「じゃがいもコロッケ」を作る「なの花の里」のメンバー=高岡市戸出西部金屋

●ソースはかけず
 客から「あっさりしている」「しつこくなくて食べやすい」などという声が寄せられ、じゃがいもコロッケは着実にファンを増やしている。高畑さんも「なるべくソースをかけずに食べてもらいたい」と、コロッケの素朴な味にこだわりをみせる。
 人手の関係で一日の生産量は百二十個が限度で、JA高岡といで農産物直売所や高岡駅前地下街の夕市などで販売すると、すぐに売り切れる。
 メンバーは午前五時ごろから二時間前後、総菜の加工に精を出す。コロッケを担当する高多恵子さん(65)は「地元の素材を使うのは、少しでも地域に還元したいから。孫も喜んで食べてくれるので、やりがいがある」と地産地消への思いを語る。
 「いずれはサトイモやカボチャもジャガイモと混ぜて使ってみたい」と会長の高畑さん。メンバーの高齢化など課題は少なくないが、ふるさとの恵みを生かした食へのこだわりは続く。

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