高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(18)

第2部・夢は揚げたて
先駆け(下) 一足早く全国から注目

揚げたての宝石コロッケ。シロエビが磯の香を運ぶ

  シロエビやサーロイン、ズワイガニ、甘エビが入ったホテルニューオータニ高岡の「宝石コロッケ」は一個二百円。コロッケの価格としては、いささか高いが、「ニューオータニ」のブランド力や材料費、手間暇をかけた調理法などを考えれば、納得の価格と言うべきなのだろう。

●金沢から常連客
 その証拠に、宝石コロッケは冷凍セットもなかなかの評判だ。年暮れには歳暮用としての需要もあり、昨年末は約百セットが売れた。評判を聞きつけ、金沢から電車で買いに来る常連客もいるという。
 宝石コロッケは具を受け止める衣にこだわりがある。種類ごとにパン粉の挽き方を微妙に変え、具材の味を引き立てる。
 サーロイン入りは粗く挽いたパン粉で油をしっかりと受け止め、ズワイガニ・甘エビ入りはパン粉を細かく挽いて口当たりをよくする。シロエビはその中間の挽き具合で、具材の持つ上品な甘さを際立たせる。
 厨房(ちゅうぼう)は、シロエビ入りの宝石コロッケの調理中、淡い磯の香が漂う。時間をかけてシロエビに火を入れ、乾燥させるためだ。乾燥させたシロエビは、すりつぶした地元産のジャガイモに練り込むが、つぶれないように力を加減する。
 ホテル一階の「カフェ&ダイニングCoo」では、宝石コロッケが考案された二年前からコロッケ定食をメニューに加えている。現在は月平均で約百五十食の注文があり、同店の看板メニューに成長した。

宝石コロッケが評判を呼び、コロッケ定食は店の看板メニューに=高岡市のホテルニューオータニ高岡

●当初は半信半疑
 価格は九百九十九円で、三種類の中から二つを選ぶことができる。店長の中川信一さん(30)は「当初は魚介類をメーンにした具がコロッケに合うのか半信半疑だったが、杞憂(きゆう)だった」と実感を込めて振り返る。
 昨年十一月、全国各地の食の紹介で定評のある雑誌「サライ」が宝石コロッケを取り上げた。評判が全国的なレベルに達していることの証左と言っていい。宝石コロッケが紹介された同誌の増刊「美味取り寄せ帖」は全国で約七万部が売れたという。
 ホテルのフロントには、宿泊客から「高岡コロッケってなんですか」といった問い合わせも寄せられる。高級路線で地元の精肉店やスーパーとすみ分けを図る同ホテルは「高岡コロッケ」全体の案内役としても一役買っている。
 同ホテル支配人の菅本昇さん(59)は「魅力のある商品には物語がある。その文脈にうまく当てはめれば、必ず成功する」と力を込める。「高岡コロッケ」の町おこしにいち早く取り組んだ先駆けとしての自負がのぞいた。

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