高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(17)

第2部・夢は揚げたて
先駆け(上) 新作でイメージ開拓

揚げたてのシロエビ入り「宝石コロッケ」

 揚げたてを二つに割れば、上品な磯の香が鼻をくすぐる。富山湾でとれるシロエビを具に取り入れた「宝石コロッケ」。二年余り前にホテルニューオータニ高岡が考案した新作で、「高岡コロッケ」の取り組みの先駆けとなった逸品だ。
 同ホテルがコロッケ作りに取り組み始めたのは、二〇〇四年の夏にさかのぼる。
 高岡市の若手職員の有志が運営するホームページ「カラーたかおか」が開設され、高岡のイメージアップにとコロッケ情報を掲載したものの、紹介されているコロッケの店はわずか三、四店しかなかった。
 これを見た支配人の菅本昇さん(59)が「せっかくの情報発信が逆効果になる。何とか協力できないか」と考えたのがきっかけで、ホテル自前のコロッケを作る計画が動き出した。

●物足りなさ
 菅本さんは「高岡には観光資源は多いが、宣伝の対象が絞り込めておらず、結果として物足りないものを感じていた」と当時を振り返る。
 同ホテルでは、シロエビとサーロインの二種類の新作コロッケを考案し、半年後の〇五年一月に開かれた「日本海高岡なべ祭り」で初めて販売した。午前十時に販売を始めたが、午後一時ごろには予定していた六百個を大きく上回る千個が売り切れた。
 祭りでは、市の若手職員も県呉西食肉組合と協力して出店し、予想以上の売り上げがあった。高岡コロッケ実行委員会の「コロッケ横丁」の先駆けとなる取り組みで、出店にかかわった若手職員の一人、表野勝之さん(34)は「目新しさもあって、大勢の人が買ってくれた」と語る。
 シロエビとサーロインの新作コロッケは、祭りの後、ホテル一階のレストランに新メニューとして登場した。
 「宝石コロッケ」の名前は、シロエビが富山湾の宝石と呼ばれていることにちなむ。しかし、同ホテルでは、サーロイン、その後に加わったズワイガニ・甘エビのコロッケも「宝石コロッケ」と呼んでいる。
 菅本さんは「言葉の持つ響きに引かれた。だれもが一瞬考えて、イメージを膨らませる商品名だから」と説明する。

「日本海高岡なべ祭り」に登場した「宝石コロッケ」。順番待ちの行列もできた=1月13日、高岡市のホテルニューオータニ高岡

●第4の「宝石」
 富山県ゆかりの食材をすべて「宝石」というブランド名でくくり、人の心を引き付ける。三十年以上のホテルマン人生で培った感性が導き出した戦略なのかもしれない。
 同ホテルでは、四種類目の「宝石」として高岡産のホウレンソウが入ったコロッケの開発を構想する。「北陸新幹線が開業するまでにコロッケの種類を充実させ、お土産の定番にすれば、全国に広がる」。菅本さんが描く将来像は高岡のまちづくりと軌を一にする。

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