高岡コロッケ物語

高岡コロッケ物語(13)

第1部・浪漫あり
ルーツ探し(下) 新名物に歴史の深みと物語

大正時代の風情を残す洋風建築。昔の街並みは、コロッケの物語の舞台にぴったりだ=高岡市一番町
山本さんが制作するホームページ

 高岡の歴史に詳しい山元醸造の山本和代子さん(46)=高岡市横田町二丁目=は、今月下旬にも同社のホームページ「室屋長兵衛」にコロッケとソースを題材にした文章を掲載する。「高岡コロッケの歴史に深みを持たせ、興味をかき立てる物語を紡ぎ出したい」というのが動機である。

●ホームページで紹介
 山本さんは四年前にホームページを開設し、北陸三県を中心に、地域に根ざした食文化を紹介してきた。二年前、富山の昆布について調べようと県に問い合わせたところ、全国で最も昆布の消費量が多いことが分かった。
 コロッケの消費量が全国トップクラスであることも、この時に知った。「なぜ、コロッケの消費量が多いのか」。本格的な調査を始めたのは、そんな偶然と素朴な疑問がきっかけだった。
 「室屋長兵衛」という題名は、山元醸造の創業者の名前に由来し、内容は長兵衛が語る形式をとっている。自らを「高岡の食文化の伝道師」と位置付ける山本さんは、加賀の醤油(しょうゆ)や富山の味噌などのルーツを探り、発信してきた。
 コロッケのルーツ探しも、この延長線上にある。「高級でぜいたくな食べ物だけが食文化を作っているのではないと思う。庶民の日常の食べ物からも考察すべきではないか」と山本さん。
 折しも地元高岡は地域間競争の中で停滞を続けており、「新名物の普及に一役買いたいという使命感がふつふつと沸いてきた」と振り返る。
 ルーツ探しに力を入れるのは、自身の具体的な体験に裏打ちされている。山元醸造は一七七二(安永元)年の創業だが、この由緒を取引先に紹介すると、それだけで商品への関心、興味が目立って高まるという。
 山本さんは「醤油でも味噌でも、大都市の消費者は商品に物語性を求めている」と分析する。高岡コロッケも歴史に裏付けられた物語を紹介することで、息の長い名物になると確信している。

●映画になれば…
 かつて西洋料理店の草分けの一つ「宝亭」があった高岡市片原横町やその周辺には、大正時代のしゃれた洋風建築が残っている。「高岡なら古き良き時代の街並みとコロッケのPRを同時にできるのではないか」。山本さんは、親子でコロッケを食べるシーンが登場する高岡の映画を思い描く。
 コロッケが高岡に入ってきた明治時代、高岡は北陸有数の商都として繁栄を誇っていた。往時の高岡を舞台にコロッケの登場を描く物語は、まちづくりが正念場を迎える現代の高岡にも格好の応援歌となるだろう。「高岡の町おこしに参加したい」。山本さんの夢は大きく、思いは熱い。

第1部・掲載リストに戻る

エピソードトップへ