高岡コロッケ〜夢は揚げたて! 富山新聞

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【2006/06/11付】富山新聞掲載

◎社説 〔高岡コロッケ〕 地域の大衆食文化に育てたい

 高岡市が官民連携で取り組む「コロッケの町づくり事業」を、地域色豊かな新しい大衆食文化を育てる試みとして盛り上げたい。たとえば金沢では、邦楽舞踊の典雅な伝統が受け継がれる一方、YOSAKOIソーランのように庶民が参加する大衆舞踊が根付いてきたが、地域の活力は、新旧を問わず多様な文化が層を成してこそ高まってくる。高岡に限らず、地域おこしには、常に新しい切り口で「名物」を生み出していく発想が求められる。
 食文化の世界で見れば、全国には長い歴史と風土が生んだ芸術品のような料理のほかに、どこでも食べられるメニューであっても、札幌のラーメン、広島のお好み焼き、宇都宮のギョーザのように、土地の名前と食べ物のイメージが不可分に結びついた地域がある。最近では、ご当地B級料理の全国大会が開かれるなど、地名と結びついた庶民の味が脚光を浴びている。
 北陸は、海、山の幸に恵まれているためか、全国共通のメニューを地域おこしに組み込むところは意外に少ない印象もあるが、石川県では、中能登町が、最古のおにぎり化石が出た旧鹿西から「おにぎりの里」を受け継ぎ、古代米を使った物産やイベントで地域を発信している。そばどころ白山市では、地元組合が特産野菜を使ったそばとうどんを商品化しブランド力アップに乗り出した。
 高岡市では富山県がコロッケ消費量全国一であることから、市の若手職員が消費量向上委員会を作って普及活動したり、道の駅が地場産素材でコロッケを商品化してきた。今回の事業では、北國・富山新聞社と市、商工会議所が連携し、実行委員会を組織してコンテストやまつりなどを展開する。
 コロッケは、カレーライス、トンカツと並ぶ三大洋食として明治以降広く普及し、青森県むつ市のようにコロッケで町おこしをしているところもある。土地の数だけ特徴的なコロッケがあると言われる中で、高岡市が一段と光る存在になるには発想力と市民の盛り上がりが必要だろう。地元での普及を図りながら、ご当地コロッケを全国発信し、各地の関係者を集める各種イベントを企画するなどして、コロッケ文化のメッカとして知名度を高めたい。